SAPコンサルタントがフリーランスとして失敗しないおすすめ対策7つ

SAPコンサルタントが独立して失敗 コンサルティング

こんにちは、otokuJETです。

最近、コンサルティングファーム時代の元同僚たちから、SAPコンサルタントとして独立しよう考えているがどう思うか?という相談を受けます。

私はSAPについては門外漢ですが、SAPコンサルタントとして独立した知人が何人かおりまして、いろんな失敗談などを聞いていました。

今回、実際にSAPコンサルタントとして独立した知人たちの経験談をベースに「よくある失敗ケースと対策」について解説していきます。
※知人より本ブログへの掲載許諾は得ています。

  • SAPコンサルタントとして独立を考えているけど、慎重に考えたい方
  • 私の知人で実際にSAPコンサルタントとして独立し、うまくいかなかった話を失敗事例としてご紹介
  • 同じ轍を踏まないよう対策をご紹介
  • SAPコンサルタントに限らず、ITコンサルタントなど何かのスペシャリストとして独立を考えている方も参考に

SAPコンサルタントがフリーランスとして独立後、失敗した事例

まず、SAPコンサルタントがフリーランスとして独立し、失敗した事例を紹介します。

SAPコンサルタント独立後の失敗ケース①:新規営業の壁が高い

まず、よく聞くのは自分で営業しきれなかったという話です。

事例①-1:外資系コンサルティングファームのSAPコンサルタントとして長年活躍してきた元同僚H氏

H氏はSAPの知識はトップクラス。

「SAPの需要は今後も増えるから、会社に利益を搾取されないフリーランスの方が儲かる」と言って、2012年に独立。


※ちなみに、独学でSAPのエキスパートを目指すことは、現実的ではありません。
本やインターネットで得られるSAPの知識は上辺の知識で、実業務には使えません。
SAP社が提供するトレーニングを受講する方法もあります。
が、費用が数十万〜100万円かかり、とても個人が気軽に払える金額ではありません。
大抵、ITコンサルタントとして外資系コンサルティングファームなどに就職し、会社のお金でSAPのトレーニングを受講したり、現場のプロジェクトに参画することで「実際に使える」技を体得するのが手っ取り早いです。
なので、この元同僚は、外資系コンサルティングファームでSAPコンサルタントとして長年習得したSAPの専門性は誰にも負けない!という勝算もあってフリーランスとして独立したのです。

しかし、独立後の営業活動はさんさんたる結果。

前職コンサルティングファーム時代に繋がりのあった顧客へ営業しても、残念なことに全く上手くいかなかったようです。

理由は大きく2つありました。

フリーランスへの業務委託が会社の与信チェックでNGとなる

一般的な企業は、業務を外部委託する場合、反社とのつながりがないか?などスキル以外の部分をチェックします。

反社以外にも、資本金◯◯円以上、個人事業主の場合は税務署への届け出をしているか?、会社の情報セキュリティ基準を満たしているか?など、様々な与信チェックが入るケースが多いです。

フリーランスの場合、会社が設定している与信チェックを全部クリアすることは難しいですよね。

フリーランスですから、そもそも資本金◯◯円以上などの会社への発注を前提としたチェック項目はまず無理です。

なので、どうしても受け入れられない項目については、除外あるいは緩和してもらうよう、会社に交渉しなければなりません。

ですが、企業側の担当者が法務部門を説得できない、あるいは社内経営会議で条件緩和の承認をえなければならず時間がかかるなど、交渉難易度が極めて高く、NGとなる可能性が高いのです。

H氏のケースでいうと、損害賠償請求の項目が除外できませんでした。

業務委託先の過失によって相手企業に損害を与えた場合、業務委託先に損害賠償を請求する旨の条件が業務委託契約書に記載されており、その上限額が青天井だったのです。

つまり、損害賠償請求額の上限がないということですから、個人資金で運営しているフリーランスにとってはリスクが大きい条件でした。

むろん、H氏は企業と交渉しましたが、担当者が法務部門を説得できずに契約締結には至らなかったそうです。

SAP導入以外の関連業務がたくさん付いてくる

SAPコンサルタントはSAPを導入するためにSAPに搭載されているどの標準モジュールを使うか?を企業の業務プロセスを理解しながら見極めたりすることが仕事です。

これだけの仕事なら良いのですが、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)業務やSAP導入後の評価、ユーザーからの問い合わせ対応など、いろんな付帯業務が追加されているケースが多いです。

これらの関連業務は通常フリーランスのSAPコンサルタント1人では対応できない量です。

なので、関連業務を契約書から除外あるいは緩和してもらうよう企業に対して交渉するのですが、難易度は高いです。

理由は、発注元である企業からしてみれば、これらの関連業務をまとめて1つの契約先に委託したほうが管理が楽だからです。

発注先が2つ3つに分割されると、発注先ごとに契約を締結したり仕事の進捗や品質を管理しなければならず、めんどうです。

H氏の場合、SAP導入に関するPMO業務の緩和ができませんでした。

SAP導入プロジェクト全体の進捗・品質等の管理業務が委託契約書に含まれており、H氏ひとりでは対応できない作業ボリュームでした。

そのため、H氏は「プロジェクトの進捗会議に出席し、助言を行う」という条件に緩和するよう企業と交渉しました。

しかし、企業の担当者が発注先を分けることを嫌がり、契約締結には至りませんでした。

結局、H氏は、独立後に1年を経たずしてフリーランスとして働くことを諦め、前職とは違う総合コンサルティングファームに再就職しました。

事例①-2:SAP会計モジュールのスペシャリストであった元同僚T氏

T氏は、SAPの管理会計モジュールのスペシャリストでした。

在籍していた外資系コンサルティングファームの中では、T氏の管理会計モジュールのコンサルティング実績は抜群。

自分のSAP習熟度であれば独立しても稼げると確信し、2014年にフリーランスのSAPコンサルタントとして独立しました。

ところが、いざ営業を開始してみると、会社との商談機会を作ることですら難しいことに気づきました。

前職で付き合いのあった元顧客へ連絡したが、既にプロジェクトは完了しており、雇ってもらう余地はなし。

大手企業にアポなしで電話をすることも考えたそうですが、どの部署の誰と話せば良いかすらも分からず断念。

結局、1年間全く仕事にありつけず貯金を食いつぶし、日系SIerの会社へ転職しました。

1年間、まともな仕事をしていなかったことと、前職の外資系コンサルティングファームの給与水準とのギャップにより、前職から年収が30%下がってしまいました。

稼ぐためにフリーランスとして独立したのに、結局、会社員に戻るはめになり、給与も下がってしまったということです。

SAPコンサルタント独立後の失敗ケース②:SAPの習熟度が浅いか狭い

次に多いのは、そもそもSAPの習熟度が不足していたという話です。

事例②-1:元総合系コンサルティングファームでSAPモジュール全般に詳しかったA氏

A氏は、某総合系コンサルティングファームでSAPコンサルタントとして活躍。

管理会計、財務会計、販売管理、在庫管理などSAPのモジュール全般への理解があり、特定モジュールに詳しいメンバーを自分のプロジェクトにアサインすることで大規模プロジェクトを成功に導いてきました。

フリーランスとして独立後、知人の会社から仕事を受託。

やる気に満ち溢れた状態で、プロジェクトのキックオフ会議に参加しました。

そこで、もう1人別のフリーランスのSAPコンサルタントもプロジェクトに参画していることを知りました。

聞くところによると、もう1人のフリーランスの方は、会社がSAP導入において最も重要視していた在庫管理モジュールに精通しており、SAP全般を知るA氏1人では賄えない部分をその方で賄おうとしたようです。

A氏とも上手く役割分担してプロジェクトを推進してくれることを期待していたようです。

ところが、会社のその思惑は外れます。

その方は在庫管理モジュールへの深い理解に加え、A氏と同様にSAP全般の知識を有していたのです。

最初はA氏とうまく連携しながら進めてはいたものの、A氏の仕事にどんどん侵食してくるようになりました。

プロジェクト開始から3ヶ月後、A氏は会社の担当者から呼び出され、予算削減の観点からもう1人のフリーランスに契約を一本化したい旨、通達されました。

理由はもう予想がつきますよね。

もう1人のフリーランスの方だけでプロジェクト推進できることが判明したからです。

A氏がその会社と締結した業務委託契約も、2ヶ月前に事前通知すれば会社の一方的な都合で解除できる不利なものでした。

A氏いわく「もう1人のフリーランスが自分の単価を上げるために自分を排除しようと会社に入れ知恵したに違いない」と。

真相は不明でしたが、結局、別のフリーランスの方に契約を一本化され、A氏は5ヶ月で契約解除となりました。

事例②-2:元会計系コンサルティングファームでSAPの販売管理モジュールに精通していたN氏

N氏は、SAPの販売管理モジュールに関するスペシャリスト。

元会計系コンサルティングファーム出身で、SAPの販売管理モジュールに関する知識と成功に導いたプロジェクト件数は圧倒的でした。

N氏のフリーランスとして最初の仕事は、SAPの販売管理と在庫管理のモジュールを導入するプロジェクト。

N氏は、クライアントが最も重要視している販売管理モジュールさえリードすればOKである旨、クライアントと事前に合意していました。

しかし、いざプロジェクトを推進していくと、販売管理よりも在庫管理を自動化すれば、会社の販売効率が向上して売上が大幅アップする可能性があることが発覚しました。

プロジェクトオーナーであったクライアントの副社長の鶴の一声で、急遽、優先度を販売管理から在庫管理へと変える方針転換があったそうです。

在庫管理モジュールに精通していなかったN氏は、プロジェクト開始後3ヶ月で契約変更となり報酬が減額されました。

そして、新たな営業活動を即座に再開しないと食べていけない状況に追い込まれました。

SAPコンサルタント独立後の失敗ケース③:フィット&ギャップスキルが不足

Y氏は。SAPの全モジュールに精通。

加えて、販売管理モジュールのスペシャリストでもありました。

ところが、Y氏は、顧客業務とSAP標準機能とのギャップをどう埋めるか?を考える仕事をした経験があまりありませんでした。

前職の日系コンサルティングファームでは、他メンバーがフィット&ギャップの分析と顧客折衝を担当することが多く、彼をサポートする役割が多かったようです。

フリーランスとして独立後、Y氏が最初にぶち当たった壁は「SAPで何ができて、何ができないのか?を整理し、整理した結果をベースにクライアントとコミュニケーションをとり、方針を決める」仕事でした。

Y氏は、SAPは相当に詳しいのですが、「クライアントの業務プロセスとSAP標準機能とのギャップを抽出。ギャップへの対応方針案を作成し、クライアントと協議しながら合理的な結論を導きだす」スキルが不足していたのです。

前職では未経験の仕事ですから当然です。

結果、プロジェクトは大幅に遅延しました。

Y氏は、クライアントからの信頼を失い、半年で契約解除されました。

プロジェクトも大きく軌道修正が必要となり、クライアントはY氏に損害賠償請求する可能性も示唆したようです。

必要な対策は?

シェアされた経験談をベースに、どうしたら防げていたか?という話で盛り上がりました。

酒飲み談義でしたのでところどころ抜け漏れあるかもしれませんが、以下のような話でした。

対策①:まず前職の業務委託として働く

SAPを導入する企業は大手が多いです。

SAP導入とは、財務会計・管理会計・販売管理・在庫管理などの業務について、各部署が独自のやり方・システムでオペレーションしてきたものをSAPを使って統合し、業務オペレーション効率を上げる取り組みです。

SAP導入効果が高い、すなわち業務が複雑で大規模な会社、つまり大企業ですよね、という理屈は自明ですよね。

元も子もない言い方ですが、そもそも大企業相手に営業するのは、フリーランス個人では難易度も高く時間もかかります。

たとえ企業にコネがあったとしても、与信チェックやSAP以外の仕事がバンドルされて発注される可能性が高く、条件緩和のためには極めて高い交渉力を発揮しなければなりません。

ですから、まずは前職のプロジェクトにフリーランスとして独立する前から声がけをしておき、そのプロジェクトに参画することから始めるのをお勧めします。

前職ですから会社の人達も知っているでしょうし、自分の実力も既に認められているわけですから、営業難易度も低いでしょう。

加えて、前職の文化や仕事のスタイルは嫌というほど自分の体に染みついているはずですよね。

フリーランスとして独立後、最初に分かりやすい実績を上げられる環境が「前職」です。

対策②:フリーランスや副業の求人サイトを活用する

新規営業については、フリーランスや副業での求人を募集しているサイトへ登録する方法が最も効率的です。

フリーランスやITコンサルタントの求人に強く、元コンサルティング会社出身の方がサービス展開している、

・ビッグツリーテクノロジーコンサルティング社のフリーランス向けの求人サービス

・みらいワークス社のサービス

のような高単価&長期契約が可能なフリーランス求人案件を多くもつ会社の紹介サービスを活用すると便利です。

もちろん、会員登録は無料です。

これらのサービスに登録し、企業からのオファーや紹介サービス会社からの案件紹介を待ったり、気になる案件には自らダイレクトメールを送ったりすることで、効率的に営業できます。

フリーランスとして独立して年間数千万円の報酬を得ている元同僚の多くは、上記2つのサービスを併用しています。

対策③:常に2つのプロジェクトを並行して走らせておく

これは上級者向けになりますが、常に2つのプロジェクトに参画しておき、新規営業がうまくいかない場合に備えておくことです。

プロジェクトに参画しながら新規営業活動を行うのは、かなりのストレスです。

ですから、最初の営業の段階で2つのプロジェクトに参画するようにしておくのです。

1つのSAPプロジェクトは1年以上と長期間ですから、しばらくの間は営業せずとも高い報酬を得られます。

加えて、途中で万が一どちらかのプロジェクトが契約解除になったとしても、新規営業するに十分な猶予を確保できます。

対策④:SAPの特定モジュールに深く精通しておく

言わずもがなになりますが、自分が得意とするモジュールの隅々まで知識を習得しておくことが肝要です。

SAPは、管理会計、財務会計、販売管理、在庫管理など業務の単位に沿った機能群を1つのモジュールとしてまとめています。

モジュール単位でどの機能を使えるようにするか、使うならばどのように使うか?をパラメーターで設定していくのです。

どのようにパラメーターを設定するか?熟知していることが、SAPコンサルタントとして最低限求められるスキルになります。

ゆえ、特定モジュールの知識の深さによってSAP導入のスピードやクオリティが決まるわけです。

もちろん、全てのモジュールを熟知していることが理想です。

ですが少なくとも、どこか特定のモジュールについて右にでるものはいないと思えるほど習得しておきましょう。

フリーランスとして独立後、クライアントからそのモジュールのスペシャリストとして絶大なる信頼を得られます。

対策⑤:特定モジュールの深さに加え、全モジュールを広く把握しておく

自分の専門とする特定モジュールを極めたのであれば、その他のモジュールの基本機能を把握しておくことを推奨します。

平たく言うと「SAPのモジュール=業務の単位」です。

ですから、自分の専門外のモジュールも把握することで、クライアントの他の業務にも関われる機会が増えます。

つまり、仕事の機会が増えるということです。

特に、販売管理と在庫管理、販売管理と管理会計、管理会計と財務会計は、それぞれの業務関連性が高い組み合わせです。

自分の専門とするモジュールに加え、関連するモジュールの基本機能を把握しておくだけでも、クライアントへの提案の質が上がってきます。

対策⑥:クライアントとの合意形成スキルを上げる

コンサルタントとして極めて基本的かつ重要なスキルの一つに「合意形成力」があります。

つまり、何かをクライアントに意思決定してもらうスキルです。

一見、クライアントが決める話なので関係ないのでは?とも思われますが、コンサルタントとして必要なことは、

・クライアントが意思決定できる材料を揃えられること

・揃った材料をベースに自分の意見を伝えられること

の2つです。

合意形成スキルを十分に磨いた上で独立しましょう。

対策⑦:成果物はノウハウとして蓄積しておく

SAPに限らず、「業務とシステム機能とのギャップを抽出し、ギャップへの対応方針を決める」プロセスは型化されています。

型通りに仕事を進める上で便利な成果物がたくさんあります。

例えば、Fit&Gap一覧、課題管理簿などです。

便利な成果物を別のプロジェクトでも再利用できるよう、成果物を体系的に管理しておくことが重要です。

ただし、成果物の著作権はクライアントに帰属する場合が殆どですので、クライアントとの契約において、クライアントの秘密情報を漏洩しない前提で成果物を二次利用する旨を握っておくことが肝要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後にポイントをまとめておきます。

  • SAPコンサルタントがフリーランスとして独立後、失敗する理由は新規営業の難易度が高いことと、そもそものSAPの習熟度やコンサルタントしての基本スキルが戦えるレベルに至っていないこと
  • まず前職のプロジェクトに参画することから始め、フリーランス向けの求人サイト(例:ビッグツリーテクノロジーコンサルティング社のフリーランス向けの求人サービス)に無料登録して無駄な営業をしないこと
  • スキルとしては、SAPの習熟度を深く広く高めておくことに加え、顧客との合意形成力を磨いておくこと

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